完美世界/誅仙世界を適度に彷徨う生き物の旅行記です。

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二重山の空は高く青く晴れ渡り
 二重山の空は高く青く晴れ渡り、採掘場にある薄汚れた小屋の黒ずんだ板葺きの屋根も温まっている。
 その温もりにぴったりと腹を押し当てて、変り者のシーライスが道行く人の袖を引いて取り留めのない戯言を必死に訴えかけているのを眺めていた。
 
 シーライスがこの採掘場の小屋の主なのかどうかは知らないが、彼はいつでもここにいる。
 近くにハウルファングとか言う名前の狼の大将が兵力を引き連れて居座っているらしく、この辺りは狼がたくさん出る。それでも彼は意にも留めずに、誰彼かまわず通りすがる人々の袖を引いては、さも重要な隠し事を打ち明けるがごとく黄金の話をする。
 欲に目の眩んだ、腕に覚えのある連中は、大概この「黄金」という言葉に惑わされ、シーライスの言いなりになってこの鉱山を駆け巡り、最後には彼の頭が少しおかしいことに気が付いて、自分がマヌケであることにも気が付く。
 だから、誰もその話をしようとしないし、だから、シーライスが持ちかける話が妄想の産物であることを誰も警告しようとしない。
 だから、今日もシーライスは何も知らない旅人の袖を引いては「秘密」を囁き続けている。

「おなかすいたね~」
 隣に座っている羽族の女が舌ったらずな声でそう嘆いた。

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「オマエ、いつでもそうじゃんか」
「なによ、ユオだっていつも他人の足かじろうとするクセに」
「……」
「いいですよぉだ。なんか美味しいものさがしてこよーっと」
 何にも言っていないのに、彼女は勝手にふくれると、神の恩寵の徴たる純白の翼を広げ、ゆっくりと祖龍の城の方へと飛び去って行く。
その姿を見送ってから、溜息をつき顎を前足に乗せた。日差しは心地よく温かく、眠気を誘う。が、眠り込むわけにはいかない。人を待っている最中なのだ。
 いつまで待つかはわからない。
 けれど、必ずここを通り過ぎる人を。
 その時がきたら、にっこりと笑ってこう言う為に。

“待ってたよ、一緒に行こうか”

 シーライスは相変わらず戯言を囁き続けている。
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